この記事でできること

親に話を持ち出す前に、家族の側で目を通しておいてください。改正で扱いが変わる部分があるので、契約の前には公証役場や専門家で最新の運用を聞くのが前提です。

「後見」と聞いて身構える前に

後見という言葉には、裁判所の手続きが重そう、という印象があるかもしれません。親に切り出せば「もうそんな話?」と言われそうで、調べるのも後回しになりがちです。ただ、任意後見は少し性格が違います。

任意後見は、親が元気なうちに「将来、判断する力が落ちたら、この人にこの範囲を任せる」と自分で決めておく契約です。判断する力が落ちてから家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見とは、誰が選ぶかが違います。

契約しても、すぐには始まらない

ここが一番誤解されやすいところです。現行の制度では、契約を結んだだけでは何も始まりません。

親の判断する力が落ちたあと、家庭裁判所に申し立てをして、任意後見監督人が選ばれた時点で効力が生じます。監督人は、任意後見人が契約どおりに動いているかを見る役割です。報酬は家庭裁判所が決め、親の財産から支払われます。

数字で見ると、2025年末の成年後見制度の利用者は259,901人。そのうち任意後見が実際に始まっている人は2,833人です(最高裁判所)。この数字は契約した人の数ではなく、監督人が選ばれて効力が生じた人の数です。

任せる内容は契約で決める

任意後見人ができるのは、契約で決めた範囲の代理です。書いていないことは代理できません。何を任せたいかを、先に家族で書き出しておくと話が早くなります。

任せたいことを書き出す

身の回りの契約まで任せられるのが、家族信託との大きな違いです。

費用は契約時と開始後で分かれる

契約のときにかかる法定の費用は、公正証書の作成手数料が1契約13,000円、登記を頼む手数料が1,600円、登記の印紙代が2,600円で、合わせて17,200円ほどです(日本公証人連合会、2025年10月改定後)。郵送などの実費は別にかかります。文案づくりを専門家に頼めば、その報酬も加わります。

もう一つは、制度が始まったあとにかかる監督人の報酬です。こちらは一律の金額がなく、家庭裁判所がそのつど決めます。契約時の2万円弱だけで済むわけではありません。

2026年の改正で変わること

2026年6月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)で、任意後見の仕組みが変わります。家庭裁判所が、明らかに監督の必要がないと認める場合には、監督人を選ばない形が可能になります。

主な部分の施行は、公布から2年6か月以内の政令で決まる日です。2026年9月の時点では未施行なので、今の契約は現行のルールで結ぶことになります。改正後にどう扱われるかは、契約するときに聞いておいてください。

親の意思が先

子どもが急がせない

任意後見は、親本人が内容を理解したうえで結ぶ契約です。子どもが先に段取りを決めて署名だけ頼む形は避けてください。親の判断する力がすでに落ちている場合は、任意後見ではなく法定後見を考えることになります。地域包括支援センターや家庭裁判所に相談できます。

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