この記事でできること
家族信託を勧めるための記事ではありません。向かない家の条件も、同じくらいの重さで書いています。契約するかどうかは、親本人と専門家と一緒に決めることです。
「家族信託」を最近よく聞くけれど
広告や相談会の案内で「認知症で口座が使えなくなる前に」という言葉を見ると、何かしなければと焦ります。その焦りのまま契約の話に進むと、あとで「うちには要らなかったかも」となりかねません。
家族信託は、親が自分の財産の一部を子どもなどに託して、決めた目的どおりに管理や処分をしてもらう契約です。法律上の正式な名前ではなく、家族が財産を託される側になる「民事信託」を一般にそう呼んでいます。信託協会も、信託銀行などが受ける信託とは別のものだと説明しています。
向きやすいのは、動かす予定の財産がある家
家族信託が役に立ちやすいのは、親の判断する力が落ちたあとも、財産を「動かす」必要がありそうな家です。
たとえば、実家を将来売って施設の費用に充てるつもりがある。賃貸アパートを持っていて、修繕や入居者との契約がこの先も続く。こういう家では、親が契約できない状態になると、売却や修繕の判断が止まってしまいます。
成年後見でも財産の管理はできます。ただ、本人の財産を守るための制度なので、家庭裁判所の関わりのもとで慎重に進みます。家族の考えどおりに早く動かせるとは限りません。先に信託しておけば、契約の範囲内で子どもが管理を続けられます。
急がなくていい家もある
反対に、財産は預貯金と年金が中心で、売ったり貸したりする予定の不動産がない家では、急いで家族信託を組む理由は小さくなります。生活費が年金でまかなえているなら、なおさらです。
兄弟の意見がまとまっていない家も、少し待ったほうがいいかもしれません。託される子どもが一人に決まると、ほかの兄弟から見れば「親のお金をあの人が握った」と映ることがあります。親本人が乗り気でない場合も同じです。
専門家に相談する前に家族で話したいこと
費用は三つに分けて聞く
家族信託の費用は、見積もりの中身が分かりにくいところです。三つに分けて聞くと比べやすくなります。
一つ目は、契約を公正証書にする場合の公証人の手数料です。これは法律で決まっていて、財産の額に応じた手数料に、信託財産1億円以下なら13,000円が加わります。5,000万円の例なら46,000円です(日本公証人連合会、2025年10月改定後)。二つ目は、契約を設計する専門家への報酬。全国一律の公定価格はありません。三つ目は、不動産を信託に入れる場合の登記の費用で、登録免許税と司法書士の報酬がかかります。
「家族信託は全国で何万件」といった数字を見かけたら、民間の調査だと考えてください。家族信託の件数を示す公的な統計は、今のところありません。
家族信託でできないこと
信託だけでは足りない部分
家族信託で扱えるのは、信託に入れた財産だけです。施設の入居契約や介護サービスの手続きのような生活面の代理は含まれないため、任意後見と組み合わせる家もあります。また、親の判断する力がすでに十分でないと、契約そのものが有効に結べないおそれがあります。税金の扱いは税理士に確かめてください。
公式情報・公的窓口
- 信託に関するQ&A信託協会
- 公証事務の手数料日本公証人連合会
- 金融取引の代理等に関する考え方全国銀行協会
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