この記事でできること

遺言の書き方そのものより、話を持ち出すまでについての記事です。言い方の例もいくつか載せましたが、親子の関係は家ごとに違うので、そのまま使うより言い換えの材料にしてください。

なぜ、こんなに言い出しにくいのか

遺言の話が重いのは、死の話とお金の話が一度に来るからだと思います。どちらか片方でも切り出しにくいのに、二つが重なっている。

それに、兄弟の目もあります。自分だけが言い出すと、何か狙いがあるように見えないか。考え始めると、黙っているほうが楽に思えてきます。

ただ、子どもの側の本音は、たいてい単純です。親が亡くなったあとに兄弟でもめたくない。手続きで途方に暮れたくない。その気持ち自体は、責められるものではないはずです。

遺言を書いている人は、実はかなり少ない

生命保険文化センターが紹介している2023年の調査では、60〜79歳で遺言書をすでに作っている人は3.5%でした。内訳は公正証書遺言が1.5%、自筆証書遺言が2.0%です。

公証役場で作る公正証書遺言は、2025年に123,891件作られています(日本公証人連合会)。件数だけ見ると多く感じますが、高齢者の数からすれば、ごく一部です。

親がまだ書いていないのは、ごく普通のこと。「まだ書いてないの?」と言いたくなる気持ちは、いったんしまっておいたほうがいいのかもしれません。

遺言の話から始めなくてもいい

考えてみると、遺言という言葉から入る必要はあまりない気がします。遺言は、親が「こうしたい」と思っていることを残す手段です。だとすれば、先に聞くべきは、その「こうしたい」のほうです。

入口にしやすい話題

こうした話が少しずつ出てきたところで、「それ、書いておいてもらえると、私たちが間違えずに済むんだけど」とつなげる。遺言は、そこで初めて出てくるくらいでいいのではないでしょうか。

言い方をいくつか考えてみる

避けたい言い方と、言い換えの例

「もめないように遺言書いといてよ」は、子どもの都合が前に出ます。たとえば「お父さんの考えを、私たちがちゃんとその通りにできるように、書き残しておいてもらえると助かる」なら、主役は親の考えのほうになります。どちらが正解ということではなく、誰のための話に聞こえるかの違いです。

ニュースをきっかけにする手もあります。2026年には遺言の制度を変える法律が公布されました。自筆の遺言に押すはんこが要らなくなるなど、書き方が変わる予定です。「こんな改正があるんだって」は、身構えずに持ち出せる話題の一つだと思います。

一度で決めようとしないことも、たぶん大事です。その日は「そういう話もあるんだ」で終わって構いません。

形式と費用は、ざっくり知っておく

親から「書くとしたら、どうすればいいの」と聞かれたときのために、基本だけ知っておくと安心です。

自分で手書きする自筆証書遺言は、2020年7月から法務局に預けられる制度があります。保管の申請は、2025年7月までに累計101,968件ありました(生命保険文化センター、法務省の公表をもとに)。公証人が作る公正証書遺言は費用がかかり、たとえば5,000万円を1人に相続させる内容なら手数料は46,000円です(日本公証人連合会、2025年10月改定後)。

先ほどの改正では、法務局で保管する新しい方式の遺言もできます。ただ、主な部分はまだ施行されていません。今書くなら、今のルールで書くことになります。

書くかどうかは、親が決める

内容に口を出さない

遺言を書くか、何を書くかは親の自由です。子どもが内容まで決めようとすると、兄弟から見て不公平に映り、かえってもめる原因になります。また、遺言が決めるのは亡くなったあとのことで、生きている間の財産管理には使えません。その点は任意後見や家族信託の話になります。

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